◆第一回廃墟キャンプ(2006)◆
その日は晴れ。キャンプにもってこいの最高の天気の中、友人の父の車に乗った四人は
お目当ての廃墟がある(であろう)山へ向かいました。途中、コンビーフやカロリーメイト、大量の2リットルコーラとアク●リアスを買い込んでクーラーボックスにぶち込み、山を目指します。
この時点での僕らのワクワクは相当なものでした。
僕もこの日の為、
仲の悪い父に頼み込んで廃墟撮影用ビデオカメラを準備してきていましたから、相当です。

…が、山が見えてきた時、不穏な空気が流れます。「…アレ、この山じゃないんじゃ…」一人が呟きます。
「あっ…」僕も『コレジャナイ』と思いましたが、時すでに遅し。
…キャンプ場が見えてきました。

やはり違う山だったようです。廃墟はここにはありません。が、
もうしょうがないのでとにかく楽しもうという事で、早速テントを張ります。
テントを張り終わると、協力してくれていた友人の父は、車に乗って「明日の昼に迎えに来るから」と言い、
去っていきました。

テントの中でしばらくくつろいだ後、四人は「ここにも廃墟の一つや二つあるんじゃないか?」という考えに至り、
とりあえず山頂を目指しながら、廃墟を探して歩いてみようということになりました。

そして二時間かけて山頂に到着したのですが、廃墟は一つも見つからず。
落胆した四人はヤケクソで「ショートカットだ!」と藪の中をこいでキャンプに戻ります。
1時間はかかると覚悟していたのですが、帰路は15分もかかりませんでした。
いくら藪の中通ってきたからってこの早さはおかしいだろ…という事で、
これは現在も僕らの中で「廃墟キャンプ七不思議」の一つとなっています。

キャンプに戻った四人はグダグダと駄弁りつつ、日が暮れるのを待ちます。
途中、森の奥に立ちション(そこにはトイレなんてありません)に行った友人が、
何やら廃墟らしき物を見つけた為、夜になったら行ってみようという事になったのです。

そして夜。件の廃墟の方へ行ってみましたが、見たところ唯の民家か、手入れのされていない別荘か?と
思った為、取材は断念。もう少し公的な物だったら探っていたかもしれませんが、最近人の手の付いた
匂いが少々したのでやめておきました。

廃墟が期待外れに終わった為、もう一度昼間に登った山の周囲で何か探してみよう、という事になり
懐中電灯とナイフを装備し、山奥へ入っていきます。

途中、首つりの紐のようなものや謎の木材オブジェを発見し「やべえよやべえよ…」と戦慄したり、
人生初の視界一面ホタルの光(漫画とかでよく出そうな絵面)を体験したり、掌にホタルが止まって感動したり、
超長い謎の滑り台を発見し四人で遊んだりしました。楽しかった。(小学生並の感想)

そして一行はキャンプに戻るのですが、ここからが地獄でした。
昼間は居なかったハエや蚊がそこらじゅうを飛んでおりまして、テントのメッシュ部分を下げざるを得なくなり、
そのせいで煙草の煙がテント中に充満するし、煙で眼はしぱしぱするし、暑いし…
テント内中央部、クーラーボックス上に置かれたコンビーフの空き容器は、
不幸にもテントに入り込み煙草の煙で天界へ召された蠅達の死骸入れと化していました。
あれはまさに地獄絵図って感じだったと思います。

そして四人は眠りに就くのですが…これがクッソ狭い。二人用テントに四人も入ってるんだから当然といえば
当然なんですが…。これが僕以外三人が全員女の子ならハーレム状態で嬉しい所ですが、
現実は野郎ですよ野郎。現実は非常に非情です。野郎四人密着して寝ても嬉しくないし地獄絵図…
なので、寝袋一つ余っていたので、ジャンケンで負けた人が頭だけテントに入った状態で寝袋を着て
体を外に出して寝よう、ということになりました。
…絶対負けられないなこの勝負、と思いましたがジャンケンするまでもなく、超暑がりの友人が
「中あっついし俺でいいよ」と寝袋を着ました。(ちなみにAION作中の「薫」のモデルは彼です。)
一人頭だけ状態になってようやくギリギリの快適さがテント内に訪れましたが、やっぱりそれでも暑いし狭いしで
なかなか眠れません。

三時頃、喉が渇いたので眠れずにいた寝袋の彼を誘いキャンプ場入口の自販機へ向かい、
コーラを買ってテントに帰宅。

その後、テント上部から吊るした懐中電灯が揺れるのを見ながら、しょうもない話をしばらくしていましたが
二人ともいつの間にか眠っていました。

…そして朝。一番に目が覚めた僕は、テント内に非常事態が起こっている事に気が付きます。
「み…水!?」テントが浮いているのです。耳を澄ませば外からはザーザーと雨の音。
真っ先に頭だけテントの中の寝袋の彼に声をかけるのですが起きません。
急いで残る二人を揺り起こし、寝ぼけ眼の二人に状況を説明します。
携帯などの電子製品を急いでリュックにしまい、三人は寝袋の彼を起こすため声をかけるのですが中々
起きてくれません。

三人はふと、外はどうなってるんだ?と思い、テントの入り口のカーテン部を開けます。
するとそこには、浸水しきった寝袋が…。当然、寝袋に包まれている彼の体は水浸しでしょう。

「なんでこの状況で寝てるんだよwww」と笑いながらツッコむ三人でしたが、このままではテント内に水が
流れ込んでくるのも時間の問題だったため、先程より声を大きくして寝袋の彼を起こします。

寝ぼけながら、ようやく起きた彼。第一声は「あれ?ションベン漏らした?」
そんな事をやっている内に、遂にテント内に水が。
急いで荷物をまとめ、土砂降りの中四人でテント解体を行います。

近くに屋根の付いた建物があった為、そこに避難しようという事に。
全員、服は上下共水浸しだったので、
四人揃ってパンツ一枚でブルブル震えながら、友人の父が来る昼を待ちました。

…そして3時頃。友人の父がやっと来てくれました。
急いで車に乗り込み、暖をとります。(真夏の話ですよコレ…)
途中のコンビニで暖かいおにぎりを食べ、生を実感しました。いやー…もうホント寒かった。
そのまま車の中で四人は眠りこけ、起きた頃には友人宅前。
色々あった第一回目のキャンプでしたが…
一番内容濃かったのはこの時のキャンプなんじゃないかなと思います。

                                             おわり

                    
                              ◆